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You’s World

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普通の裂け目◆8◆


自分は馬鹿だ。
どうしようもなく
馬鹿だ。

救いようのない馬鹿が
この世にいるとしたら
間違いなく
自分なのだろう。

胸を張っていえる。





炎症を起こした指を
暗闇の中で
目の前にかざした。

馬鹿の証拠が
痛くて仕方なかった。


勉強なんてしたくない、と思う自分と
しなくちゃ赤点を取ってしまう、と恐れる自分。

葛藤は毎日続いた。
具合の悪さも最上級を迎えていた。

眠れやしないのに
ベッドに横になり
暗闇に落ち着く。

明日から期末テスト。

自分は
完全主義者なのだと思う。
完璧にしないと
気分悪い。
だけど
完璧にはしたくない。

完璧など
できやしないのに。


悔しくて
自分が分からなくて
ただ
ムカついて

泣けてきた。



テストの後の緊張がほとけた瞬間
「.....っぐっ!!」

吐き気と供に
頭痛が一気に押し寄せてきた。
くらくらする。
あぁ、闇だ。
闇が見える。


「....詩夷??大丈夫??」

声にはっとした。
私は一人ではなかった。

「顔色、悪いよ??」

心配そうに
覗き込む瞳に出会った。

――人の目は嫌いだ。
   張り付いた嘘が見え隠れする。
   わかっているような、
   見透かすような色がある。
   それが嫌いだった。
   同情も
   哀れみもいらないのに
   それらが映る
   目が嫌いだ。

なのに

桧埜の目に
私の嫌いなものは
何一つ移ってはいなかった。


桧埜の目に
私はどう映っているのだろう。
やはり
曇っている瞳が見えてしまうのだろうか。

それが怖くて
ぱっと視線をそらした。

「大丈夫!!
 しゃっくりがでちゃったょ」



私はうまく笑えているのだろうか。






赤点同盟だと
私は思わず叫んだ。

そうして
私は桧埜を裏切らせないようにした。
―裏切ったら、許さない。
私の心のうちに
こんな思いがあることを
桧埜は知らない。
知らないほうが、幸せだというものだ。


最初のテストは
赤点ぎりぎりだった。

とったことのない点数に
自分は自分に憤った。

私が
指を炎症まで起こした理由は
そこに現れていなかった。

泣きたくなった。

努力は必ず、結果に出るなんて
嘘だ。

もう、何も信じない。


手首の傷が
8本増えた。

血が滴り落ちて

私は
暗闇で笑った。
滴り落ちる血は
終わりを知らないかのようだった。

歓喜に満ちた
私の顔を
誰が見ることが出来るだろうか。

<Written by 風上 遥>


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